【貿易】ディスクレとは?L/C・銀行・対策方法など解説!
例えば、あなたがECサイトで”白いマウスを10個”発注したとして、送り状/品物は”黒いマウスが5個”となっていた・・・
このような売り手―買い手間での齟齬は、どのような業態においても起きうるかと思います。
本稿では、貿易管理における”ディスクレ”の解説を中心に、システム導入による業務標準化のコツについてもご紹介していきます。
目次
貿易におけるディスクレとは?

「ディスクレ」とは、信用状(L/C)取引において、信用状に定められた条件と船積書類の内容が一致しない「不一致」を指します。
これは「ディスクレパンシー(discrepancy)」の略語で、品名、数量、金額、署名などの細部に至るまで、1文字でも相違があると発生します。
ディスクレがあると、銀行は信用状に基づく支払いを拒否する可能性があり、輸出者にとっては取引上のリスクとなります。
ディスクレが起きている状態では、信用状が持つ代金支払保証がなされません。
本来L/C決済において、売り手は信用状と船積書類を以て銀行へ買取依頼を行います。
これに対しディスクレ発生時は、銀行が買い取りを拒否できるということになるのです。
そうした場合の対処としては、以下のパターンが存在します。
●L/Cのアメンド
「アメンド」は訂正を指します。L/Cの発行依頼者(買い手)へ修正依頼を行う方法です。
買い手と発行銀行との合意で可能ですが、両者とのやりとりに時間を要する点がデメリットと言えます。
●L/Gネゴ
「L/G」は保証状の意です。売り手が保証状を作成し、内容を修正せずに買い手と交渉する方法です。
時間的バッファがなく、かつディスクレがわずかな場合に用いられ、不払いなどが起きた場合に売り手責任となる方法です。
●ケーブルネゴ
「ケーブル」は電信を表します。ディスクレが大きな場合、買取銀行から発行銀行へ連絡を取り、発行銀行が認めた場合にアメンドと同等の効力が発揮される方法です。
なお、書類到着後に新たなディスクレが判明した場合は支払遅延や拒否にもなり得るため注意が必要です。
いずれもディスクレの内容や買取依頼人の信用度によって選択肢は変化します。
それでは、なぜこのような不一致が発生するのか、次項ではその原因を紹介していきます。
書類不一致の原因—Excel手入力での限界点

貿易書類の主たる作成ツールは、2020年代においても未だExcelが大半を占めています。
もちろんローコストかつ導入負担の低さ、自社内で自由な編集が可能などというメリットはあるでしょう。
作成する書類別にExcelファイルをテンプレート化やマクロでの半自動化、ならびに都度上書きといった方法は、スタートアップにおいては確かに効果的と言えます。
しかし、品名や数量は手入力であることが多く、記入モレをはじめ、過去ファイルの流用によって表記揺れや古い情報が混入するリスクは常に存在しています。
また、手製のフォーマットであることから担当者単位での入力ブレといった懸念もままあるでしょう。
つまり、こうした手作成での運用方法のデメリットこそが、ディスクレの温床として徐々に蓄積されていくのです。
続いては、船積書類の中から、S/Iを例に具体的なリスクについて紹介していきます。
S/I作成の属人化と再発リスク

S/I(Shipping Instruction=船積依頼書)は、営業・物流・通関など複数部門が関与する書類であり、情報の集約と整合性が求められます。
これを前述のようにExcelベースで運用すると、多くの場合「担当者しか分からない」仕様になりがちで、修正や引き継ぎが困難になるケースもあります。
また属人化が進むと、まず担当者不在時の対応が滞ることになります。
例えば、別の社員が代わりにフォローしたり、退職された場合などは引継ぐ担当者への負担増など、個人で作られた不慣れなフォーマットでは、書類ミスの再発リスクが高まりやすいと言えるでしょう。
次項では、そうした担当者依存から脱却したケースについて紹介していきます。
導入事例:担当者依存からの脱却
愛知県のとある家具メーカーでは、20年ほど前から海外セールスにも注力されています。
海外への販売を始めた当初はExcelに長けた担当者がマクロを組み、商品マスタの管理をはじめ船積書類の作成やフォーマットの管理を行われていました。
その後事業が軌道に乗り、業務量の増大したことで担当者の増員対応がなされましたが、特定の担当者でしか実務作業が出来ない/マクロやフォーマットの修正が難しいといった状況となられました。
こうした経緯から属人化した体制を見直す為、貿易管理システムの検討をスタート。
特に重視されたのは、使いやすいパッケージという点です。
●担当者依存から脱却する為の、部員全員が使いこなせるシンプルな操作性
●海外出張が多い為、24時間利用可能であること
この2点を満たすシステムを導入され、以下の効果を挙げられています。
1.フォローアップや引継ぎ体制の構築!
OJTのし易いパッケージであったことから特定担当者への依存を脱却し、出張や異動時のフォローもなんと部署全員が対応可能な体制を整えられました。
2.船積書類をミスなく簡単に作成!
同社では年間で約700件のINVOICEを作成。家具は構成品があるためINVOICEでは完成品、PACKING LISTでは構成品と明細の表示が異なることから誤記の懸念があったところ、SALES NOTEからINVOICE、PACKING LISTまで数クリックで一貫して船積書類を作成可能な設計により、業績が拡大した現在でもミスなく運用されています。

導入事例:カリモク家具株式会社 – TRADING事例紹介 |サンプランソフト
上記のように適切なシステムやベンダーの選定を行うことで、担当者レベルのみならず部署全体、ひいては事業単位での効率化につながるという事例でした。
ディスクレのよくある質問
信用状で「10月15日積載」と指定されているのに、船荷証券に「10月17日」と記載されていた場合、ディスクレに該当します。銀行は支払いを拒否する可能性があり、輸出者は代金回収に支障をきたします。
必要書類の欠落は重大なディスクレとなります。たとえ他の書類が完璧でも、信用状条件を満たしていないため、銀行は支払い義務を負いません。書類の事前チェックが不可欠です。
なります。例えば信用状が「Steel Bolts」と指定しているのに、インボイスに「Stainless Steel Bolts」と記載されていると、品名不一致と判断される可能性があります。信用状の文言と完全に一致する表記が求められます。
【まとめ】ディスクレとは?リスク管理や対策方法を解説!
■ディスクレとは?
信用状に記載の条件について、船積書類が満たしていない(=不一致)ことを指す
→銀行の買取拒否に対し、アメンドやL/Gネゴといった対応方法も存在
■書類不一致の原因—Excel手入力での限界点
ローコストでの導入メリットを上回る、手入力である入力不備や表記揺れのデメリット
■S/I作成の属人化と再発リスク
「担当者しか分からない」仕様になりがちで、フォロー者への負担も大きくなりがち
■導入事例:担当者依存からの脱却
自動作成機能など、OJTをし易いパッケージの選定によりディスクレの防止に繋がった
本記事では、貿易におけるディスクレの紹介と、それを解消するための標準化の視点についてご紹介しました。
今後は、貿易管理の自動化やソフトウェアとのデータ連携等がさらに進む中、ドキュメント作成の属人化やフォローアップに不安を感じる場面も増えていくかもしれません。
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この記事を書いている株式会社サンプランソフトは、30年間、一貫して貿易システムに特化してきたシステムベンダーです。
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著者:株式会社サンプランソフト
1994年の設立以来、一貫して貿易システムの開発・提供に取り組んでいます。
弊社が提供する貿易管理システム『TRADING』は、輸出入・輸出・輸入・国内販売管理に関わる業務を一元管理し、
貿易業務の標準化と効率化を実現するクラウド型パッケージソフトです。
これまでにのべ2,000社以上の導入経験から得たノウハウを活かし、お客様の課題解決を支援しています。
