【図解付き】為替予約とは?仕組みをわかりやすく解説!
今や、世界のグローバル化が進み、商品の売買取引相手が「海外」と行うのは一般的な時代になりました。
企業間だけではなく、個人での輸出入も進んでいます。
海外取引を行う上で外貨を使用する場合、「為替レート」は重要な要素となります。
「為替レート」は日々変動するので、将来、予定外の為替差による損益が発生するリスク(為替リスク)を意識する必要があります。
最近は円安のためか、営業でお伺いしたお客様とのお話の中で、為替予約が話題に上がることが増えたように感じます。
そのため、今回はこの「為替リスク」を回避(ヘッジ)するための手段である「為替予約」についてご紹介します。
目次
為替レート・決まり方について
国境を越えた海外企業と売買取引を行う輸出入の場合、代金の決済時に使用する通貨の取り決めが必要です。
「米ドルと円」、「ユーロと円」、「米ドルとユーロ」など、組み合わせはさまざまです。
取引相手と異なる通貨で行う売買取引を「外国為替取引」といいます。
この「外国為替取引」は、通貨が異なる両国間の決済では、取引通貨に交換する必要があります。
自国の通貨とは異なる取引通貨に交換する時、使用する交換比率を「為替レート」といいます。
例えば、アメリカの仕入先との取引を【米ドル】で行い、決済は、輸入後45日後という支払条件とします。
(輸入時)
10万ドルの商品を輸入(仕入)⇒ 10万ドル×135円=1,350万円(買掛金)
(代金決済時) ・・・ 輸入した時から45日後に決済
10万ドルの商品代金を支払う⇒ 10万ドル×150円=1,500万円(買掛金の支払い)
10万ドルの商品を輸入した時は、円に換算すると1,350万円だったのに、45日後のレートでは輸入時に比べると円安となったので、1,500万円必要となり、商品代金を決済することになります。
為替レートの差から、150万円の「損失」になりました。
これは、輸入時には予想できなかったことですよね。
為替レートはなぜ変動するのか
では、為替レートが変動するのはなぜでしょうか。為替レートは、誰かが一方的に決めているのではありません。
為替市場において、需要と供給のバランスによって変動する「変動相場制」をとっています。
買いたい人が多い通貨は価格が上がり(通貨の価値が上がる)、売りたい人が多い通貨は価格が下がり(通貨の価値が下がる)ます。
為替市場で取引するのは、銀行、証券会社、投資家、一般企業、個人など様々です。
また、通貨を売り買いする要因は、その国の金利・物価変動、経済指標、中央銀行の介入、要人発言の内容、国際情勢等、様々です。
コロナの流行やウクライナ情勢等、為替レートが変動する要素で、現在は円安傾向にあります。
為替市場は、世界中の様々な通貨が対象となり、取引は24時間行われています。
よって、為替レートは日々変動しているのです。
テレビやインターネットのニュースでも、為替に関する情報は毎日報道されていますよね。
為替リスクを回避(ヘッジ)する対処方法
為替市場で、さまざまな要因から日々変動するレートを将来的に予測するのは難しいことだと思います。
しかし、海外の取引相手との「外国為替取引」において、為替の変動による損失は、会社の利益に直結するため、できる限りリスクを抑える回避策を考える必要があります。
そこで、将来の為替レートは予測できなくても、将来使用する為替レートを事前に取り決めることはできますその手段の一つが「為替予約」です。
「為替予約」(先渡取引」)とは、将来予定している売買取引において、銀行と予め通貨、為替レート、金額、受渡日、期間を取り決め、決済時に予約した通貨とレートを使用する契約のことをいいます。
将来、為替レートが変動した場合でも、その影響を受けることなく、予約した為替レート、通貨で決済処理ができるので、自社の採算を確定することができます。
この予約した為替レートを「先渡為替レート」(forward exchange rate)といいます。
「為替予約」の仕組みを図解で説明
「為替予約」は、銀行とある一定の期間で、予め取り決めた為替レートで外貨を使用する契約であることは、既にご紹介しました。ここでは、「為替予約」の仕組みについて、簡単に図解で説明したいと思います。
前述した例を「為替予約」を使用した場合に置き換えてみます。自社の取引銀行と、【45日後に1ドル=135円の為替レートで10万ドル購入する】契約をします。
すると、買掛金10万ドルの決済は、決済当時の為替レートではなく、予約した為替レートで購入した10万ドルを使って決済ができます。
前述した例では、決済当時の為替レートを使用したため、150万円の損失がありましたが、「為替予約」を使用することで、為替差による「為替差損」が回避され、採算も事前に確定できます。
今までの例は、輸入・決済時に円安になる場合を前提にご紹介いたしました。
確かに、決済時のレートが輸入時のレートと比べると円高になり、為替差による「利益」が発生することも考えられます。
よって、「為替予約」をすることにより、「利益」が得られなくなる可能性もあります。
しかし、この「利益」は得られなくても、為替差による「損益」を回避(ヘッジ)することを目的としているのが「為替予約」なのです。
輸出の場合も同様、将来円高になることで発生する為替差のリスクを、「為替予約」を使用して売上金額を確定しリスク回避(ヘッジ)に備え、安定した収益を上げることにつながります。
次に、「為替レート」の決め方についてご紹介します。
「為替予約」のレートは、現時点の「為替レート」(直物レート・スポットレート)、「相手国の金利」、「円金利」、「期日までの期間」で決まります。
例えば、1ドル=130円、日本の金利が1%、米ドルの金利が3%、期間を1年間運用すると、「為替予約」のレートは1ドル=127.48円という計算です。
131円30銭÷(為替予約レート)=1.03米ドル なので、
(為替予約レート)=131円30銭÷1.03米ドル
=127.48円/米ドル・・・直物レートよりも円高ドル安
「為替予約レート」は、直物レート(スポットレート)と、両国の通貨間の金利差が反映されます。
金利の高い通貨の「為替予約レート」が直物レート(スポットレート)より安くなることを「先物ディスカウント」といい、金利差分のディスカウント(割引)となり、金利の安い通貨の「為替予約レート」が直物レート(スポットレート)より高くなることを「先物プレミアム」といい、金利差分のプレミアムが得られます。
上記例の場合、直物レートが1ドル=130円から、為替予約レートが1ドル=127.48円なので、円はドルに対しプレミアム状態となります。
「為替予約」の注意点
次に、「為替予約」で留意すべきことがあります。一度契約した「為替予約」は、取り消すことができないということです。
期間内に、契約した金額は使い切る必要があります。
「為替予約」は、銀行との間で外貨決済を行うときの為替レートを予め決める「売買取引」と規定されます。
そのため、銀行の事前審査を受ける必要があります。
「為替予約」を契約する銀行側としては、万が一、倒産などの理由で「為替予約」が不履行になったとき、実際の為替相場との差損益を回収できなくなるリスクがあるので、「為替予約」の契約を与信行為とみなしているそうです。
為替予約のメリット・デメリットについては、下記の記事でも詳細にまとめてますので、ぜひ参考にしてください。
【まとめ】為替予約とは?仕組みをわかりやすく解説!
「【図解付き】為替予約とは?仕組みをわかりやすく解説!」と題して、ご紹介してまいりました。
為替レートは、輸出入などの貿易取引では、仕入や売上の実績、入金や支払の決済などの実利益の把握だけでなく、受注や発注時などの予定利益を把握する上でも重要な要素です。また、為替差による「為替損益」で、大きく変わります。
安定的にビジネスを続けるために、回避できるリスクは、皆さん、常日頃考えられていらっしゃいますよね。
この「為替予約」による取引は、輸出入の貿易だけではなく、外貨建ての資産運用でも、ごく普通に行われる取引です。
昨今の急激な円安傾向となったように、日々変動する為替レートのリスク回避(ヘッジ)として、「為替予約」に注目してみるのはいかがでしょうか。
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