【解説】通関手続きの流れと必要書類とは?

【解説】通関手続きの流れと必要書類とは?

歴史的な円安が進む昨今、新たな市場を求めて海外に新規ビジネスの展開を考えている企業も多いことと思われます。
コロナ渦の影響も後押しする形で、ビジネスのオンライン化が世界規模で浸透してきた現在、海外との交流の場や商談の機会を得ることに対するハードルは格段に低くなりました。
その一方で、海外向けのビジネスを展開する際に障壁となりやすいのが、モノのやり取りの際に生じる「通関手続き」ではないでしょうか。

海外にモノを輸出する際、または海外からモノを輸入する際には必ず通関手続きが必要になります。
この通関手続きですが必要な書類が多く仕組みも複雑なため、どうしたらよいかよく分からないといった方も多いことでしょう。

実際のところ、通関手続きのケースの大半が「通関士」や「フォワーダー」といったプロの手を借りて貿易実務が回っています。本コラムでは輸出や輸入の際にお世話になる通関士やフォワーダーといった事業者がどのような役割を担っているのかを確認した上で、輸出入それぞれの手続きのおおまかな流れとその際に必要となる書類について紹介していきます。

通関手続きとは

関税法の第六十七条によると 「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量および価格 (中略) その他に必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない。 (輸出申告又は輸入申告の手続)」 と定められています。

ここに定められた輸出申告、輸入申告の手続きが一般に通関手続きと呼ばれているものになります。
通関手続きでは 「このような貨物を、この数量、この金額で」どこに輸出するのか、またはどこから輸入するのかを税関長に申告し許可を得なければなりません。

この通関手続きを行う際にお世話になるのが先ほど紹介した、通関士やフォワーダーと呼ばれる事業者です。
この通関士やフォワーダーといった事業者は貿易実務の現場でどのような役割を担っているのでしょうか。

通関士とフォワーダーとは

通関士とフォワーダーとは

通関士とは、「財務大臣の許可を受けて通関業を営む者」のことであり、その業務は通関業法に規定されています。
主な業務内容としては、

・税関官署に対する輸入および輸出の申告の代理
・輸入貨物に係る関税、消費税、延滞税、重加算税等の申告および納付、関税の減税、免税に係る制度の摘要手続きの代理

などが挙げられます。輸出入の申告を行う際にはNACCSと呼ばれる貿易関連の行政手続きや民間業務をオンラインで処理することのできる専門のシステムが用いられますが、NACCSの利用には有償のサービスに事前に登録する必要なだけでなく専門的な知識も必要となるため、通関士に委託するのが一般的となっています。

続いてフォワーダーについて確認していきましょう。
フォワーダーとは「貨物利用運送事業法に基づき、国土交通大臣の認可を受けた貨物利用運送事業者」のことを指します。
特にその中でも国際輸送を専門に扱う事業者がフォワーダーと呼ばれます。
主な業務内容としては、

・港湾内での船舶と陸の間の貨物の輸送の手配
・輸出入者への貨物の集荷や配送の手配
・輸出入者、通関士、船会社への各種書類の配送の手配

など業務範囲は多岐に渡ります。
港湾内には立ち入りに許可が必要な区画も多く存在するため、専門の事業者が貨物や書類の輸送を代行する必要性があります。まるで血液が体内を駆け巡るように、関係各所に貨物や書類を輸送する手配を行うのがフォワーダーの役割となります。

通関士とフォワーダーそれぞれの業務のイメージはつかむことができたでしょうか?
貿易業務の現場はいたるところで専門的な知識や資格・許認可が求められるため、その道のプロフェッショナルである通関士やフォワーダーに委託することが一般的となっております。

それではここから先は「通関士やフォワーダーに委託する一般的なケース」で通関手続きについて紹介していきます。

輸出の際の通関手続きの流れと必要書類

輸出の際の通関手続きの流れと必要書類

輸出申告の手続きの大まかな流れは次の通りです。

輸出申告 → 書類審査 → 貨物検査 → 許可 → 船積み

輸出者は貨物の輸出申告に必要な書類を揃えて、通関士に手続きを委託します。
税関に対する輸出申告は、通関士がNACCSから電子申請にて行いますので、輸出者は通関士に「輸出申告書」に加え、「INVOICE (送り状)」 や 「PACKING LIST (梱包明細書)」、「SHIPPING INSTRUCTION(船積依頼書)」、「輸出に関係する許認可 (※1) の許可証や承認証」、 「通関委任状」などの必要書類を通関士に預けることになります。

こちらに挙げた書類のうち、輸出申告書以外のものは原則として税関が求めてきた際に提出するものであり提出を求められないこともあります。しかし、提出を求められなかった場合でも書類には保管の義務があることに注意しましょう。

さて輸出申告に関する書類の審査が終わりますと、次は貨物の検査となります。
保税地域 (※2) へと搬入された貨物は検査 (税関が必要と判断した場合) を経て、問題がなければ輸出許可が得られ船積みされ出港することとなります。

※1輸出に関係する許認可:法令や条約で定められた品目を輸出する際は事前に経済産業大臣の許可を得る必要がある。申請が必要な貨物は経産省HPから確認できる。

 (輸出承認対象貨物一覧(METI/経済産業省))

※2保税地域:関税を支払うことなく、外国貨物の取り扱いができる場所。機能の範囲によって5種類に大別される。通関申告の際の貨物の検査は保税地域にて行われる。

輸入の際の通関手続きの流れと必要書類

続いて輸入申告の手続きについて紹介します。大まかな流れは次の通りです。

        ↗種類審査・貨物検査↘             

輸入申告                    許可→搬出

        ↘   関税の納付   ↗ 

輸出との最大の違いは、輸入の際には「関税やその他の(お酒や石油などに課せられる)税の納付」が必要であることです。通関士に委託するケースでは、輸入申告と併せて関税の計算や納付についても代行してくれます。

輸出の際と同様に、輸入者は通関士に委託する際に輸入申告に必要な書類を預けます。「輸入申告書」に加え、「INVOICE (送り状)」 と 「PACKING LIST (梱包明細書)」、「Bill of Landing (船荷証券)」、 「輸入に関係する許認可 (※1) の許可証や承認証」、 「原産地証明書」 、 「通関委任状」 などを預けることになります。保税地域に輸入貨物が搬入されると、通関士は預かった書類をもとにNACCSから電子申請にて輸入申告を行います。

原産地証明書は関税の優遇措置を受ける際に必要となるので、輸入品の関税率について正確に把握し必要ならば原産地証明書の手配を行うようにしましょう。輸入申告書と原産地証明書以外は、輸出の際の書類と同様に税関に求められた際に提出するものとなりますが、やはり同様に保管義務があることに注意しましょう。書類の審査や貨物の検査に加え関税の納付を経て輸入の許可が下りると、いよいよ貨物は保税地域の外への搬出が可能となります。

※1輸入に関係する許認可:法令や条約で定められた品目を輸入する際は事前に経済産業大臣の許可を得る必要がある。

輸入承認対象貨物一覧(METI/経済産業省)

まとめ

通関手続きの一連の流れは通関士やフォワーダーに委託するのが一般的です。
その際は、必要書類を用意し通関士に預ける必要があります。輸出、輸入における主な必要書類は以下の通りです。

【輸出】
・輸出申告書
・INVOICE
・PACKING LIST
・SHIPPING INSTRUCTION
・輸出に関係する許認可の許可証や承認証
・通関委任状 など

【輸入】
・輸入申告書
・INVOICE (輸出者作成)
・PACKING LIST (輸出者作成)
・Bill of Landing(輸出者作成)
・輸入に関係する許認可の許可証や承認証
・通関委任状 など

サンプランソフトの「TRADING」は、INVOICEやPACKING LIST、SHIPPING INSTRUCTIONなどの通関手続きに必要となる書類のテンプレートが用意されており、必要な項目を打ち込むことで誰でも簡単に書類の作成が可能です。

また、作成したINVOICEなどの書類データに紐づけて、一緒に提出する許可証や通関委任状などの関連書類のデータを合わせて保管することができますので、「○○年××月の輸出の書類を提出しなくてはならない」といった場合でも必要な書類を簡単に探し出すこともできます。通関書類の作成や保管といった業務内容に不安のある企業様は、「TRADING」の導入をご検討されてみてはいかがでしょうか?