【図解付】加工貿易とは?メリット・デメリットを簡単に説明!

【図解付】加工貿易とは?メリット・デメリットを簡単に説明!

日本は中国、アメリカ、ドイツに次ぐ世界第4位の貿易大国です。
貿易を行う際の取引の仕方や方法にはさまざまな種類がありますが、貿易のメリットとして市場を拡大したり、多様な商品やサービスを入手したり、競争力を高めるという点があります。

本記事では、資源がとぼしい日本が、自国における資源やエネルギー不足といった背景があります。
その課題を補うために海外から原材料や半製品を安く仕入れて自国で加工し、それらを高く売り出すことで利益を得る「加工貿易」についてご紹介します。

加工貿易とは

「加工貿易」とは海外から原料や部品などを輸入してそれらを加工して製品にします。
加工した製品を再び海外に輸出する貿易のことです。 

例えば、日本は石油や鉄鉱石などの資源を海外から輸入して、それらを使って自動車や家電などの製品を作り海外に輸出しています。
英語では、”added-profit trade”といい、加工で付加価値をつけた貿易です。

歴史的には、加工貿易は産業革命以降に発展しました。
イギリスやドイツなどの先進国は、植民地や半植民地から原材料を安く入手し、工業製品として輸出しました。

日本も明治時代から加工貿易を始めました。
第二次世界大戦後に高度経済成長を遂げると、資源の乏しさや円高などの影響で加工貿易の構造が変化しました。

経済的には、加工貿易は比較優位や付加価値の創出によって成り立っています。
比較優位とは、ある国が他国よりも相対的に安く生産できる商品やサービスのことです。

付加価値とは、原材料や部品などの価格に対して製品やサービスの価格がいくら上乗せされているかのことです。
加工貿易では、原材料や部品を安く輸入し高度な技術や労働力を使って加工することで、比較優位や付加価値を高めています。

加工貿易の種類(事例)

加工貿易には、順委託加工貿易と逆委託加工貿易の2種類あります。

順委託加工貿易(Outward Processing Trade)は、輸入国で特定の生産工程や加工作業を行った後、製品を再輸出するタイプの取引です。この形態では、通常、輸入国での生産工程によって付加価値が生まれ、再輸出されます。

輸入国での関税や税金が軽減されるため、多くの企業がこの方法を使用して、競争力を高めています。
具体例として、部品を輸入して自動車を組み立てて再輸出する自動車産業が挙げられます。

加工貿易

逆委託加工貿易(Inward Processing Trade)は、輸入国で特定の生産工程や加工作業を外国に委託し、製品を再輸入する取引です。

輸入国での工程の一部を外国で実行し、付加価値を生み出すため、輸出国での関税や税金が軽減されることがあります。
逆委託加工貿易は、輸入国で必要な特定の技術や設備を持たない企業が外国の専門業者に生産工程を委託する際に利用されます。

具体例として、高度な精密加工が必要な部品を外国の工場に委託して再輸入する航空機産業が挙げられます。
また、逆委託加工貿易を行う場合には、加工する原材料の輸出には承認が必要となりますので、注意が必要です。

逆委託加工貿易

日本は資源が乏しいため順委託加工貿易に依存してきましたが、近年は円高やコスト削減のために逆委託加工貿易に移行しています。
中国やASEANなどの発展途上国は安価な労働力や優遇税制などを利用して逆委託加工貿易を拡大しています。

これらの加工貿易形態は企業が国際市場で競争力を保ち、効率的な生産手法を採用するための重要な方法です。
国によっては、順委託加工貿易と逆委託加工貿易に関連する特別な規制や手続きがある場合があります。

したがって、各国の関連法令を確認することが重要です。

加工貿易の主な国

日本:資源が少ないため石油や鉄鋼などの原材料を輸入し、自動車や精密機器などの高付加価値製品を輸出しています。
中国:2020年の時点で世界最大の貿易大国であり、多くの原材料や部品を輸入して加工し、電子機器や衣料品などを輸出しています。
ドイツ:ヨーロッパ最大の経済大国であり、機械や化学製品などの高品質製品を輸出しています。
韓国:半導体やディスプレイなどの電子機器や自動車などの製品を輸出しています。
台湾:半導体や液晶パネルなどの電子部品や情報通信機器を輸出しています。

加工貿易とは異なる中継貿易

中継貿易とは輸出国から中継国に材料を輸出し、中継国にて材料の組み立て・加工を行った後、輸入国に再度輸出する方法です。

通常の国際貿易は2つの国の間で商品と金銭の交換が行われますが、中継貿易は3つの国が関与します。
商品が最初の輸出国から中継国へ、そして最終的に輸入国へと移動する国際貿易の形態です。

中継貿易のメリットは中継国にとって、「売買差額やサービス料などから収益を上げることができる」ことです。
外貨の獲得が可能なため、関税優遇などの特典を享受できるので、中継貿易を積極的に支持している国もあります。

加工貿易とは異なる中継貿易

加工貿易のメリット、デメリット

最後に、加工貿易におけるメリット・デメリットを5つずつご紹介します。
メリットは、以下の通り。

  1. コスト削減: 異なる国々で生産工程を最適化し、コストを削減できる。
  2. 産業特化と専門化: 各国が得意とする分野に特化し、品質と生産効率を向上できる。
  3. 貿易促進: 国際的な生産ネットワークが貿易を促進し、国際市場へのアクセスを強化する。
  4. 経済成長と雇用: 加工貿易によって雇用を創出し、経済成長を促進する。
  5. 資源の効率的利用: 資源が効率的に利用され、原材料供給国と需要国の相互依存が高まる。

デメリットは、以下の通り。

  1. 産業依存度の増加: 特定の生産工程に過度に依存することによる経済的リスク。
  2. 労働条件と倫理の問題: 労働力コストの低い国での労働条件と賃金に関する倫理的な懸念。
  3. 貿易不均衡: 高付加価値工程と低付加価値工程を担当する国との貿易不均衡。
  4. 知的財産権侵害: 知的財産権侵害や模倣品の生産の増加。
  5. 環境への影響とサプライチェーンの脆弱性: 環境への影響とグローバルなサプライチェーンの脆弱性の増加。

【まとめ】加工貿易とは?メリット・デメリットを簡単に説明!

加工貿易は国際的な貿易において欠かせない要素であり、多くの国々にとって貴重な経済活動です。
この貿易形態を通じて各国は資源と専門技術を結びつけ、世界市場で競争力を高める機会を見出しています。

しかしそのメリットと共に課題とリスクも存在しますので、注意深い計画と対策が必要です。
貿易管理システム「TRADING」は、海外売上も海外仕入にも対応しているため、このような一連の流れで三国間の取引も管理していただけます。