海外取引信用における与信管理と対策について

海外取引における与信管理と対策について

そもそも与信とは「取引先に信用を付与すること」です。

企業間の取引において、特に海外の取引先と取引を開始する際は、日本とは商習慣が異なることを意識する必要があります。その上で取引先をどこまで信用して良いのか、つまりどれくらいの規模まで取引金額を設定できるのかということに繋がります。

特に、支払期日に対する感覚が日本では厳守することが当然であっても、海外では多少の遅れは大した問題ではないといった日本とは異なる考えがあります。
そのような取引先からも確実な債権回収のためにも与信管理が重要になってきます。

取引先の信用度や取引限度額、取引条件の設定についてご紹介いたします。

与信管理の設定について

まずはダンレポートなどを利用して海外取引先の信用調査を行う必要があります。
取引先より決算資料を入手しその取引先に格付けを行います。

格付けには取引条件や取引限度額、与信期間を設定しておきます。
取引先に設定された格付けは年に1回など定期的に見直しを行う必要があります。

もちろん設定した格付けの条件に見合った取引条件とならない場合もありますので、その場合は契約金額の一部を前受金とする、取引条件をD/P(Documents against Payment)とするなどリスクヘッジを組み込むことを検討します。

リスクヘッジについて

リスクヘッジについて

地域によってリスクヘッジの手段が異なっています。
アメリカではファクタリングが利用されている傾向にあり、ファクタリング会社が売掛債権を買い取って代金を支払うシステムです。
ファクタリング会社は金利分を差し引いて支払いますので、回収できるのは金利分を差し引いた金額となります。

ヨーロッパでは主に取引信用保険が利用されています。
取引信用保険は保険会社が提供するサービスです。
保険会社へ保険料を支払うことで一定期間を超える支払遅延、取引先の倒産によって回収不可となった金額に対する保険料を受け取ることができます。

ヨーロッパではユーラヘルメス信用保険会社、コファスジャパン信用保険会社、アトラディウス信用保険会社といった世界3大取引信用会社があり、日本の損害保険会社もこの3大取引信用保険会社と提携して取引信用保険を取り扱っています。

インドやインドネシアなどのアジア圏では国内L/Cが利用されているといった特徴があります。
貿易取引のL/Cのように銀行を介した取引となります。
銀行を介した取引には銀行引受手形というものがあり、銀行が取引先の代わりに支払を行います。
銀行が介入することで多少信用度が低い取引先でも取引を行いやすくなるという点です。

なお、これまでは企業ベースでのリスクヘッジについて述べてきましたが、国自体の財政が不安定な場合についてはどうでしょうか?
国の財政が不安定な場合、銀行自体が破綻するといったことも考えられます。
そのような場合は、日本の銀行や日本貿易保険などが用意をしている次の商品を利用してリスクを引き受けてもらいます

1)L/Cコンファメーション(L/C確認)
L/Cベースの取引で相手国の支払停止やL/Cを発行した銀行が倒産した場合に、日本の銀行が代わりに代金を支払ってくれます。
保証料は輸出者負担となりますが、貿易保険と異なりL/C金額の全額が保証されます。

2)フォーフェイティング
輸出者が銀行に買い取ってもらった輸出手形が不払いとなっても銀行が輸出者に手形の買戻しを行わないといったものです。銀行に買い取ってもらった時点で回収が完了したこととなります。
前述のL/CコンファメーションもフォーフェイティングもL/C発行銀行に対し日本の銀行がリスクを取れない場合は利用できないため注意が必要です。

3)海外(輸出)取引信用保険
海外の取引先が倒産や代金の不払いとった場合に、取引信用保険会社から保険金が支払われます。
この海外(輸出)取引信用保険は前述の倒産や債務不履行だけでなく、取引先国の輸入制限や為替取引制限、戦争、地震などの非常危険に対するリスクもカバーされています。

4)日本貿易保険
日本の企業が行う海外取引における輸出不能、代金回収不能といったリスクをカバーしてくれます。
利用するためには輸出相手に日本貿易保険の海外商社名簿に載っている必要があり、載っていない場合は信用調査報告書等を提出して審査が必要となります。

取引開始と決済条件について

前述したとおり、海外は日本とは異なる商習慣を持っており、文化や法律制度が異なる相手先との取引となります。
当然、考え方も異なりますので取り決めたことを書面化して取り交わし、認識を合わせておくことが重要となります。

受注時の契約には決済に関する条件も含まれています。
回収方法はいくつかありますが、輸出において送金スピードの速さから「T/T(電信送金)」による取引が多く利用されています。

また、「L/C(信用状)」による取引も回収のリスクヘッジという点で利用されています。
取引先との間に銀行が入ることによって回収のリスクが担保されますが、国家レベルで経済が不安定な場合は銀行自体の破綻リスクも考慮する必要があります。

債権管理の重要性と対応

取引を開始するまでに取引先の信用調査から格付け、決済条件によるリスクヘッジについてご紹介をしてきました。
しかし、どれだけ与信管理の設定がしっかり行われてきても、売上時の債権管理がおろそかになっていては意味をなしません。

それは与信管理で設定された「与信枠」は「売上債権残高(売掛金、受取手形等の合計)」によって「与信残高」が決まるためです。
さらに国内取引の場合は企業単位もしくは、グループ企業単位で管理を行っていくことが一般的ですが、海外との取引の場合は、一般的にINVOICE単位で決済条件が設定されています。
これらのことから、取引先に対して発生した輸出INVOICE単位に対し回収予定はいつなのか、回収予定日が到来したものに対して回収されているのかといった管理を行うことが重要です。

では、どのように債権管理を行っていけば良いでしょうか。

輸出INVOICE単位での売掛金管理であればExcelでも管理することが可能と思われるかもしれません。
しかし、それでは売掛金に対する回収管理は行えても与信の管理は行えていません。
取引先に対して設定された与信限度額と売掛金の残高から現在の与信枠を算出し、受注時(もしくは出荷時)の金額を踏まえてチェックを行う必要があるためです。

Excelを使用した管理ではどうしても個人管理の面が強くなってしまい、会社として全体の情報をとらえるためには不十分となってしまいます。
そのためには、海外との取引に対応した販売管理システムを利用するのも一つの手であると考えます。

海外との取引に対応しているため、取引時の通貨ごとの売上実績や売掛金の管理も可能です。

TRADINGでの与信管理

【まとめ】海外信用取引における与信管理と対策について

国ごとの情勢や相手国の銀行によるリスクは保険を上手に利用して回避することができます。
取引先に対するリスクは与信の格付けを設定し、個々の取引の記録をしっかりと管理することで対策を取ることができます。

全ての日本企業がそうだというわけではありませんが、海外取引で失敗する日本の企業は「相手のことを調査しない」といったことをよく聞きます。
当然、新しく取引先を発掘してきた場合はしっかりとした信用調査を行うでしょう。

しかし、そうではない場合があります。
それは大手取引先や有力者からの紹介を受けた時、それだけで信用してしまう傾向にあるようです。
紹介者が必ずしも取引の保証をしてくれるものではないので、しっかりと信用調査を行っていくことが与信管理の第一歩ではないでしょうか。

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